製作現場を大公開!プロによるオリジナルスマホケースの作り方

スマホケースの印刷業者はたくさんありますが、どのようにオリジナルのスマホケースを作っているのでしょうか。作成に必要な機材、デザインデータ作成時に気をつけること、印刷方法や梱包方法など、オリジナルスマホケースの作り方を解説します。

製作現場を大公開!プロによるオリジナルスマホケースの作り方

事前に必要なもの

オリジナルのスマホケースを作るには無地ケースやデザインデータ、UVプリンターなど、データ作成〜印刷〜梱包のパートごとにさまざまな機材、用具が必要です。あまり見慣れないものがあるかもしれませんが、スマホケースの作成にはどれも必要なものですので用意しましょう。

データ作成に必要なもの

印刷データを作成するにはパソコン、Adobe Illustrator、テンプレートファイルの3つが必要です。Illustratorでテンプレートファイルにデザインを配置します。

パソコン

パソコンを使って印刷データを作成します。機種はWindows、Macどちらでも結構です。ファイル容量の大きなグラフィックデータを取り扱うことが多いので、高速のCPUや大容量のメモリーを搭載したハイスペックマシンがおすすめです。

パソコン

Adobe Illustrator

アドビシステムズ社のグラフィックソフトです。その名のとおりイラストを描いたり、画像を貼り付けてデザインを作成できます。スマホケースの印刷データはIllustratorのファイル形式(拡張子はai)で入稿しますのでIllustratorは必須です。

Adobe Illustrator

テンプレートファイル

印刷データのひな型となるファイルです。このテンプレートファイルをIllustratorで読み込み、データ内のスマホケース印刷可能範囲にデザインを配置します。スマホは機種によって大きさが異なりますので各機種ごとにテンプレートを用意する必要があります。

テンプレートファイル

印刷に必要なもの

スマホケースに印刷するにはUVプリンターや無地スマホケース、手袋などが必要です。治具や除電器など聞き慣れないものもありますが用意しましょう。

UVプリンター

無地ケースにデザインを印刷するプリンターにはUV(紫外線)を照射して瞬時にインクを硬化できるUVプリンターを使用します。多くの印刷業者で使用されているプリンターは「ミマキエンジニアリング」と「ローランド ディー.ジー.」というメーカーのもので、一度に20〜30個のスマホケースを印刷できるよう印刷台に大きなスペースがとられています。プリンター自体のサイズも大きくミマキのUJF-6042MkIIという機種は1,665(幅)× 1,290(奥行)× 856mm(高さ)、重量も150kgあります。金額も4,298,400円とかなり高額ですが必要不可欠ですので購入しましょう。

UVプリンター
UJF-6042MkII(ミマキ) VersaUV LEF-300(ローランド)
サイズ 1,665(幅)× 1,290(奥行)× 856mm(高さ) 1,560(幅)× 955(奥行)× 576(高さ)mm
重量 150kg 144kg
価格 4,298,400円 4,500,000円
URL https://japan.mimaki.com/product/inkjet/i-flat/ujf-6042mkII/ https://www.rolanddg.co.jp/products/printers/versauv-lef-300-flatbed-printer

無地スマホケース

オリジナルで作成できるスマホケースは背面にカパッとはめるハードタイプと、挟み込むように保護する手帳型タイプの2種類に大きくわかれます。ハードタイプは耐衝撃性に優れたポリカーボネート製が、手帳型タイプはPUレザー(合皮)製が主流です。スマホは機種ごとにサイズや形状が異なりますので、無地ケースもそのぶん必要です。機種が増えるごとに在庫も増えていきますので、どの機種のケースを取り扱うかあらかじめ決めておきましょう。なお印刷事業を本格的に始めるには大量の無地ケースが必要ですが仕入先、購入方法についてはこちらのコラムをご覧ください。

無地スマホケース

治具

治具(じぐ)とは工業用機械で加工したり業務用プリンターで印刷をする際に、加工物や印刷物がズレないように固定しておく補助用器具のこと。スマホケース印刷の場合は、無地ケースの大きさにくり抜いた格子状の治具をプリンター台に設置し、印刷するぶんの無地ケースをセットします。また一度に複数の無地ケースを印刷するため、置き場所を固定することによりデザインデータの印刷開始地点を決めるという役割りもします。なお治具ですが、印刷業者の多くはアクリル板をレーザー加工機でカットして自作します。自社で作れない場合は治具製作業者というのがありますので依頼しましょう。

治具

手袋

印刷前、印刷後のスマホケースを汚してしまわないために手袋は必須です。印刷〜梱包までの作業中は常に手袋をはめておきましょう。素材は軍手のような厚手のものよりも薄くて手にぴったりフィットするコットン製、または静電気防止用手袋がおすすめです。

手袋

メガネ拭き

印刷する前に無地ケースについた汚れ(ホコリや指紋など)をメガネ拭きで拭き取ります。無地ケースに汚れがついたまま印刷してしまうと、その部分だけインクがのらなかったり印刷がボヤケてしまいます。市販のメガネ拭きで結構ですので用意しておきましょう。

メガネ拭き

徐電器

徐電器とはイオン化した空気を送り帯電物(電気を帯びたもの)から静電気を除去する機械のこと。無地ケースに静電気がついたまま印刷してまうと上記のメガネ拭きと同じく印刷がうまくできません。印刷前には必ず除電器で無地ケースについている静電気を除去する必要あります。あまり聞き慣れないものかもしれませんがアマゾン楽天といったECサイト、またはアズワン株式会社アイリス株式会社のメーカー直販サイトで購入できます。風の吹出し口がブロアーとファンの2タイプがあり価格は30,000〜80,000円ぐらいです。

徐電器

ホコリ吹き

メガネ拭きで汚れを拭き取り、除電器で静電気を除去したあと、最後にホコリ吹きでホコリを吹き飛ばします。真ん中のふくらんでいる部分を押すと先端より空気が吹き出します。プリンターにセットしたあとになるべく近づけてから空気を吹きかけましょう。

ホコリ吹き

梱包に必要なもの

スマホケースの梱包にはOPP袋とダンボールが必要です。OPP袋に1個ずつ個包装したスマホケースをダンボールにまとめ梱包してお客さんへ発送します。

OPP袋

ツルツルとしたクリアタイプのビニール袋のことで正式名称は2軸延伸ポリプロピレン(Oriented Polypropylene)といいます。完成したスマホケースにキズが付かないようOPP袋へ個別梱包します。吊り下げ穴がついていたり不透明タイプもあります。

OPP袋

ダンボール

個別包装したスマホケースをまとめて発送するためのダンボールも必要です。発送するスマホケースの個数にあわせて大きさの異なるダンボールを何種類か用意しておきましょう。輸送中にスマホケースが崩れてしまわないよう梱包材があるとなお安心です。

ダンボール

デザインデータのチェック

いよいよオリジナルスマホケースの制作に入りますが、まずはお客さんよりいただいたデザインデータをチェックします。お客さんがデザインを入れ込んだテンプレートファイル(入稿データと言います)をIllustratorで開き下記ポイントを確認しましょう。

デザインデータのチェック

印刷可能範囲からはみ出していないか

多くのテンプレートファイルでは印刷可能範囲を色付きの枠線で囲ってあります。この範囲よりはみ出てしまうと印刷できない(印刷が切れてしまう)ので、デザインが枠線内に収まっているか確認しましょう。なお印刷時に若干のズレが生じる場合がありますので、印刷可能範囲はフチのギリギリまでではなく1〜3mmほど内側に収めておくと安全です。

フォントはアウトライン化されているか

デザイン内に文字がある場合、フォントはアウトライン化してもらう必要があります(アウトライン化とは文字データであるフォントを図形データに変換すること)。こちらのパソコン内に同じフォントがあれば正しく表示されますが、ない場合は異なるフォントと置き換わったり文字バケした状態で印刷されてしまいます。

画像ファイルは埋め込み処理されているか

テンプレートファイルに画像を設置する方法として「埋め込み」と「リンク」のふたつがあります。埋め込みとはテンプレート内にそのまま画像を保存してしまうことで、リンクとはテンプレートとは別ファイルとして画像を用意することです。リンクですとリンク切れで画像が表示されない場合があるので埋め込み処理してもらいましょう。

カラー設定はCMYKになっているか

色を表す方式には「RGB(赤:Red、緑:Green、青:Blue)と、「CMYK(シアン:Cyan、マゼンダ:Magenta、イエロー:Yellow、黒:K」の2種類があります。スマホケースを印刷するときはCMYKですのでデザインデータも同じくCMYKになっているか確認しましょう。RGBをCMYKに変換して印刷するとデザイン本来の色味が変わってしまいます。

不要なデータが入っていないか

お客さんのデザインデータを開いてみたところ、実際には使っていないデータ(レイヤーやオブジェクトなど)が残っている場合があります。気づかずに印刷してしまうとそのまま印刷されてしまいますので、不要なデータはあらかじめ削除しておいてもらいましょう。ファイル構成もシンプルになりますしファイル容量も軽くなるので一石二鳥です。

デザインデータのチェック

完成したデザインデータですがそのまま印刷はできません。印刷用のデータに変換してプリンターに取り込む必要があります。プリンターに取り込むには専用のRIPソフトを使うのですが、ミマキの場合はRasterLinkというソフトを使用します。

デザインデータのチェック

RIPソフトとは

RIPソフトとはアドビシステムズ社のソフトで作られたデータを、UVプリンターに対応したデータ形式に変換するソフトのこと。アドビシステムズ社のソフトで作られたデータはポストスプリクトと呼ばれる独自のプログラム言語で記述されています。このポストスプリクト形式のデータをUVプリンターで印刷可能な形式にRIPソフトで変換します。

RasterLinkでデザインデータを変換

RasterLinkを起動して印刷データを読み込んだらまずは印刷に関する設定を行います。印刷する位置や向き、素材の種類、解像度のほか、各インク色の濃淡や重ね塗りの回数なども設定できます。ここでの設定により印刷後の色味が変わりますのでいろいろ試してベストな設定を探しましょう。プレビュー画面で確認して問題なければ変換します。

無地ケースのチェック

ついに印刷用データが完成しさっそく印刷したいところですが、無地ケースのチェックをしましょう。ダンボールにしまっていても意外とホコリがついていたり汚れているものなんです。また印刷がキレイにのるように静電気の除去も必要です。

汚れを拭き取る

まず無地ケースを取り扱う際は必ず手袋を着用しましょう。手袋がないと指紋がついてしまいますし、爪が伸びているとキズをつけてしまうことがあります。手袋を着用したら無地ケースをしっかり持ち、メガネ拭きでホコリや指紋などの汚れを拭き取りましょう。強くこすりすぎると逆にキズがついてしまいますので力加減には注意してください。

汚れを拭き取る

静電気を除去

ハードケースに印刷する場合は除電器という機械で静電気を除去します。静電気を帯びたままですと、うまくインクがのらなかったり印刷がボヤケてしまいます。除電器のスイッチを入れるとイオン化した風が吹き出しますので、無地ケース(とくに印刷面)によく当てて静電気を飛ばしましょう。1個につき30秒ほど当てていればじゅうぶんです。

静電気を除去
静電気を除去

糸の処理

手帳型ケースに印刷する場合はステッチ部分(縫い目部分)の糸の処理を行います。糸が飛び出していると見た目としてもキレイではないですし、糸の上から印刷してしまうとその部分だけデザインが抜けてしまいます。細かい作業ですがピンセットやとげ抜きで不要な糸を抜きましょう。もちろん糸の処理をする際も手袋は必須です。

糸の処理

無地ケースをUVプリンターにセット

無地ケースのチェックが終わったらUVプリンターにセットしましょう。まずはあらかじめ制作しておいた治具をプリント台に置き、無地ケースの大きさにくり抜かれたスペースにはめていきます。最後にホコリ吹きでホコリを飛ばせばいよいよ印刷です。

治具に無地ケースをセット

まずはあらかじめ制作しておいた治具をプリント台に置きます。治具がないと印刷中に無地ケースが動いて印刷がズレてしまいます。また一度に複数の無地ケースを印刷しますので、どこに無地ケースがあってどこから印刷を始めるかのガイドにもなります。治具を置いたら無地ケースがすべて同じ向きになるよう注意しながらセットしましょう。

治具に無地ケースをセット

ホコリ吹きでホコリを除去

無地ケースをチェックした際に汚れは拭き取りましたが、念には念を入れて最後にホコリを除去しましょう。ちょっとの動きでもホコリは舞い上がるので、治具に無地ケースをセットした際に付着している可能性があります。ホコリ吹きの先端をなるべく無地ケースに近づけて1個ずつ丁寧にシュッシュと空気を吹きかけます。

ホコリ吹きでホコリを除去

印刷

デザインデータ、無地ケース、プリンターのセッティングがすべて完了したら印刷です。まずは数個でテスト印刷、色味のチェックをしてから本番印刷(量産)です。やり直しが効かないのでなるべくロスがでないよう慎重に進めましょう。

印刷

UVプリンターで印刷

いよいよ待ちに待った印刷です。UVプリンターの印刷開始ボタンを押すと印刷が始まります。インクを吹き出すヘッドが無地ケースの上を行ったり来たりしながらデザインが印刷されていきます。またUVとあるようにインクを吹き付けると同時に紫外線を浴びせインクを硬化します。印刷中に左右へ移動するヘッドをよく見るとピカっと光るのがわかります。

テスト印刷してから本番印刷

いきなり本番印刷をするのではなくまずは2〜3個でテスト印刷をして、印刷位置や印刷後の色味がしっかり合っているか確認しましょう。もし印刷位置がズレていたり色味がおかしい場合はデザインデータを修正してうまく合うまで調整します。場合によってはお客さんにデータを修正してもらう場合もあります。すべてOKであれば本番印刷です。

検品

印刷が完了したらデザインどおりに印刷できたか検品します。検品のポイントとしてはデザインデータどおりに印刷ができているか、汚れやキズがないかの2点です。お客さんへ発送する前の最終確認ですので細部までしっかりチェックしましょう。

検品

デザインのチェック

テスト印刷で印刷位置や色味は確認していますが、印刷を何度も繰り返していくと徐々に位置がズレたり色味が変わってしまう場合があります。またインク切れやマシントラブルが起きてプリンターの設定をやり直さないといけないこともあります。初めのほうに印刷したものと最後のほうに印刷したものを見比べて印刷位置や色味を確認しましょう。

汚れとキズのチェック

次に汚れとキズのチェックも行います。こちらもプリンターにセットする際に確認していますが、治具にセットしたりプリンターから取り出す際に汚れやキズが付いてしまうこともあります。また印刷の際にインクが無地ケースの裏側に流れ込んでしまうことも。裏側もしっかりチェックして汚れていたらメガネ拭きでしっかり拭き取りましょう。

梱包

検品が問題なく終わったら梱包して完成です。梱包はOPP袋といわれる透明のビニール袋にスマホケースを1個ずつ個別包装します。個別包装したスマホケースをダンボールにまとめて入れて封をすればオリジナルスマホケース作成の一連の流れは完了です。

梱包

OPP袋に個別包装する

完成したスマホケースをOPP袋に1個ずつ包装していきます。包装は一見すると簡単そうに思えますが、スマホケースを入れる向きを統一する、糊付けする際はハミ出ないようにまっすぐ封をするなど、細かいところまで神経を使います。OPP袋に入れることで輸送中にスマホケース同士がこすれあってキズがついたり印刷が剥げてしまうことを防げます。

ダンボールにまとめ梱包する

個別包装したスマホケースをお客さんの元へ発送するためにダンボールにまとめて梱包しましょう。注文数に応じてちょうどよい大きさのダンボールで送れるよう、サイズの異なる3種類ぐらい(大、中、小)は用意しておくこと。隙間ができた場合は緩衝材を入れて動かないように固定します。最後に納品書を入れてガムテープで封をすれば完了です。

まとめ

オリジナルスマホケースはUVプリンターや無地ケースなどたくさんの機材を使い、複数の工程(データチェック〜印刷〜検品〜梱包)を経て作られています。これからスマホケースの印刷事業を始める方はワンステップごと習得していきましょう。

関連商品