みなさんが普段使っているスマホケースはどのように作られて(印刷されて)いるのかご存知でしょうか。スマホケースの印刷に必要なもの(機材、素材)、製作の流れ、製作している印刷所についてなど、印刷業者みずからが徹底解説いたします。これから印刷業を始めようと考えている方に役立つ情報が満載です!
スマホケースに印刷できるプリンターについて
スマホケースの印刷には業務用のUVプリンターを使用します。UVプリンターとはUV(Ultraviolet rays:紫外線)を照射することでインクを瞬時に硬化できるプリンターのこと。インクを吹き付けるノズルのうしろにUV照射装置が付いており、スマホケースに印刷した直後にインクが固まります。そのため印刷後すぐに印刷面を触ってもインクが指に付いたり印刷がずれてしまうことはありません。
インクはUV硬化インクという専用のインクを使用します。シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、ホワイトといったカラーのほかクリア(透明)のインクがあるのが特徴です。クリアのインクはスマホケースの最前面に印刷することでコーティングの役割をしたり、何重にも重ねて印刷することでデコボコとした厚みをもたすことができます。
UVプリンターは業務用ということでプリンター自体のサイズは大きく、重さもかなりの重量があります(下記のスペック表を参照)。そのぶん印刷面のスペースは大きく取られておりハードタイプのiPhoneケースでしたら一度に20〜30個並べて印刷できます。印刷スピードも早くiPhoneケース1,500個でしたら3日(1日8時間として)で印刷できてしまいます。メーカーですが「ミマキエンジニアリング」と「ローランド ディー.ジー.」がメジャーどころで多くの印刷工房、工場にて導入されています。
UJF-6042MkII(ミマキ) | VersaUV LEF-300(ローランド) | |
---|---|---|
サイズ | 1,665(幅)× 1,290(奥行)× 856mm(高さ) | 1,560(幅)× 955(奥行)× 576(高さ)mm |
重量 | 150kg | 144kg |
価格 | 4,298,400円 | 4,500,000円 |
URL | https://japan.mimaki.com/product/inkjet/i-flat/ujf-6042mkII/ | https://www.rolanddg.co.jp/products/printers/versauv-lef-300-flatbed-printer |

印刷できるスマホケースの種類について
UVプリンターではハードタイプ(ポリカーボネート製)と手帳タイプ(PUレザー製)のスマホケースに印刷することができます。ハードタイプのポリカーボネートとは熱可塑性プラスチックの一種で耐衝撃性、耐熱性に優れた素材です。スマホケースのほかアイロンやドライヤーなど家庭電化製品の部品としても使用されています。
ハードタイプのスマホケースとして使用する際はスマホの側面と背面を守るようにカッチリとはめられる形状をしています。ボタンやカメラホールの箇所はくり抜かれているので電源ON/OFF、ケーブルでの充電、カメラ撮影などの操作はケースをはめたまま行えます。厚さは1㎜程度、重さも15グラム程度と薄く軽いためスマホにはめていても気になりません。本体カラーはホワイト、ブラック、クリアが一般的です。
一方のPUレザーは布地にポリウレタンなどの合成樹脂を塗布して作られた人工レザーのこと。柔らかくしっかりと手に馴染む、水をはじくので汚れにくくメンテナンスが簡単、弾力性と柔軟性が高いので加工しやすい、などの特徴があります。手帳型ケースは名前のとおり手帳のような形状をしておりスマホをぐるっと取り囲みキズや汚れから守ります。マグネットでフタを固定するフラップ、カードを収納できるカードポケット、ストラップを取り付けられるストラップホールなどの機能があります。

印刷に必要なものと印刷の流れ
スマホケースの印刷にはいままで紹介してきたUVプリンター、無地ケース(ハードタイプまたは手帳タイプ)、そしてデザインデータが必要となります。デザインデータとはスマホケースに印刷するデザイン(キャラクターやイラスト、ロゴなど)の画像データのこと。iPhoneやXperiaなど機種ごとに用意された無地ケースの型(テンプレート)に、印刷したいキャラクターやイラストの位置、大きさを決めて配置。このデータをUVプリンターに取り込んでスマホケースに印刷していきます。なおデザインデータはアドビシステムズのAdobe Illustratorで扱えるai形式での作成、入稿が一般的となっています。
実際にスマホケースへの印刷は以下の手順にて行います。
ハードタイプの場合
- デザインデータをUVプリンターに取り込む
- ケースの汚れ、静電気を除去
- ケースをUVプリンターにセット
- ホコリを除去
- 印刷開始
- 印刷完了



手帳タイプの場合
- デザインデータをUVプリンターに取り込む
- 糸の処理
- ケースの汚れを除去
- ケースをUVプリンターにセット
- 印刷開始
- 印刷完了



印刷前に無地ケースの汚れや静電気を除去するのはとっても大事です。汚れや静電気がついたままですとインクがうまくのらず印刷がボヤケてしてまいます。手帳タイプはステッチの部分の糸がほつれている場合がありますのでハサミやピンセットで取り除きましょう。
いよいよ印刷となりますがいきなりUVプリンター全面を使用して印刷せず、まずは数個でテスト印刷を行いましょう。テスト印刷では印刷がズレていないか、色味はちゃんと出ているかを確認します。問題がなければ量産となりUVプリンター全面を使用して20〜30個まとめて印刷していきます。
スマホケース以外に印刷できるもの
UVプリンターはスマホケース以外のさまざまな素材にも印刷することができます。
素材 | 主な用途 |
---|---|
ABS樹脂 | ノートパソコン、テレビ、プラモデル、リコーダー、アタッシュケース |
TPU | ホース、チューブ、ハンドル、ゴルフボール、スポーツシューズ |
PVC | レコード、バッグ、ポーチ、ビーチボール、浮き輪 |
ポリスチレン | 食器、CDケース、発泡スチロール、カップラーメン容器 |
アクリル | キーホルダー、パスケース、スマホスタンド、モバイルバッテリー |
皮革 | 衣服、革靴、鞄、ベルト、椅子、野球グローブ、サッカーボール |
スマホの無地ケースと同じように無地のアクリルキーホルダーやモバイルバッテリーを在庫として持っておけば取り扱い商材の幅が広がります。またお客さんより「◯◯の素材に印刷してほしいです」といった持ち込み素材の問い合わせがくることがあります。そのためUVプリンターで印刷できる素材を把握しておくことは大切です。

スマホケースの印刷所について
スマホケースを印刷してくれる工房や工場は都内に何件くらいあるのでしょうか。Googleマップで「スマホケース」「印刷」「工場」などのキーワードで検索すると20〜30件ほどマップ上に赤色のピンが表示されます。それぞれの印刷所サイトには取扱い商品をはじめ金額、納期、注文までの流れ、よくある質問、ブログなど、スマホケースの印刷を依頼するために必要な情報が掲載されています。なかにはUVプリンターやレーザー加工機など設備の紹介をしているところもあります。
印刷所の多くはスマホケースのみではなくモバイルバッテリーやスマホスタンドなどのスマホ関連アクセサリー、またアクリルキーホルダー、パスケース、ミラーといったオリジナルグッズなど、多数のアイテムを取り扱っているところが多いです。いずれのアイテムも小ロット・短納期での製作を行っており、「1個からOK」「即日発送」対応している印刷所もあります。Googleマップだけで20〜30件、そのほか掲載していない印刷所もあるので、都内にはかなりの数の印刷所があるはずです。小ロット、短納期、価格、取り扱い商品の幅広さなど、いかに独自の色を出せるのかがポイントとなるでしょう。
まとめ
以上のように印刷業者はスマホケースを製作(印刷)しています。専用のプリンターを使用したり、細かな工程を経ているからこそ品質のよいスマホケースを製作できるというわけです。スマホケースの製作に興味がある、またスマホケースの製作に関するご質問がございましたらお気軽にお問い合わせください。